社労士から一言~外国人技能実習制度の改正にご注意~
皆様の中には外国人の技能実習生を受入れておられる、あるいはこれから受入れを考えておられる事業所様もおありになるかと思います。
すでにご存知の通り、平成22年7月1日より「出入国管理及び難民認定法(入管法)」が改正されました。この改正により、「技能実習生」という在留資格が創設され、入国1年目(講習終了後、雇用契約に基づいて講習を実施する場合は当初から)から労働基準法上の労働者として労働基準関係法令の適用を受け、また社会保険・労働保険の加入義務も発生することになりました。
今回は入管法の基本と外国人を雇入れる際の注意点について説明していきたいと思います。
先日、アメリカでコカイン所持により有罪判決を受けたセレブ女性が成田で入国を拒否され、そのまま引き返すという事件がありました。国際慣習法上、どんな外国人を受け入れ、また排除するかはその国が決めることになっており、我が国では入管法によって、国際交流、経済発展等の観点から外国人の円滑な受入れを推進する一方で、犯罪者・テロリストなど我が国の安全を脅かす外国人に対しては厳格に対応しています。
入管法では、日本において行う社会的活動や、日本人の配偶者のように身分や地位で入国するものを「在留資格」としてリスト化し、その中のひとつに該当しなければ入国を認めないことになっており、さらにそれぞれの活動内容に応じて在留期間が決められています。各在留資格には「活動の範囲、内容」が定められており、与えられた在留資格の許容範囲を超えて就労することは認められていません。例えば「留学生」が学費を補うために働きたいという場合は、「資格外活動」の許可を受けて許可の範囲内で認められた時間や内容のアルバイトが出来るのです。
このように日本の入管法は、在留資格や在留期間については厳格な定めがありますので、事業主の皆さんが外国人を雇入れる際には、必ず就労可能な在留資格かどうか、また、在留期間内であるかどうかを確認して下さい。雇入れ後も、在留期間の更新を忘れてオーバーステイとなった場合は不法滞在となり、雇用主も不法滞在者を雇っているということになってしまいます。不法就労の外国人を雇った場合には、雇用主にも不法就労助長罪が適用される他、摘発によって生産がストップしたり、納期に間に合わなくなったりして取引先の信用を失う場合もあり、雇用主側も大きなリスクを負うことになるため十分な注意が必要です。
さて、実際に外国人を雇入れた場合、社会保険や労働保険の取扱いはどうなるのでしょうか?
結論から言えば常用的に雇用される場合は、外国人であっても原則として健康保険・厚生年金(国民年金)・雇用保険などに日本人と同じように加入することになり、常用雇用ではない場合でも在留期間が1年以上見込まれる場合には国民健康保険に加入することになります。健康保険制度の加入に関しては、平成22年4月以降、在留期間の更新の際には健康保険証を提示することとなっており、社会保険未加入の事業所では国民健康保険加入を促す等の注意が必要です。年金制度に関してはイギリス、ドイツ等社会保障協定が結ばれている一部の国では、二重加入を避けるための措置が設けられています。また、年金を受給せずに帰国する場合等一定の条件を満たし、被保険者期間が6ヵ月以上ある場合には帰国後に脱退一時金を請求することが出来ます。給与から源泉徴収する所得税や住民税の取り扱いについては居住者か非居住者か等により取扱いが違いますので、篠原税理士にご相談下さい。
労災保険や労働基準法はたとえ不法滞在の外国人であっても適用されることになります。不法滞在という弱みに付け込んで不当に安い賃金で働かせたり残業代を支払わないことは許されないということであり、不法滞在の外国人が事故にあった場合には、雇用主の責任が問われることになる、ということです。
技能実習制度は本来、技能等の移転を通じた「人づくり」という国際協力、国際貢献のための制度ですが、一部には低賃金の労働力確保のために利用されている現実があり、本来残業が禁止されているはずの研修生に残業を強いたり、実習生に残業代を支払わない等問題のある事業所がマスコミにより報道されました。このような事業所では外国人労働者が低賃金の労働環境に耐えかねて逃げ出し行方不明となり、結果的に不法滞在者となるケースや、事業所が帰国した労働者から残業代の支払を求められて倒産に至るケースもみられました。
このような事態を受けて平成22年7月、入管法が改正され、新たに「技能実習生」という在留資格が設けられるとともに、保証金や違約金の不当な金品徴収等の禁止、監理団体による実習実施機関への訪問指導や監査の実施・帰国旅費の確保等の支援体制の強化や運営の透明化が図られ、監理団体等が重大な不正行為を行った場合の受入れ停止期間が延長され、欠格要件も新設されました。
なお、技能実習生が受講すべき講習に関しては日本語や日本での生活一般に関する知識、円滑な技能等の習得に資する知識の他、専門的知識を有する者から法的保護に必要な情報に関する講習を受けることが含まれます。当事務所は法的保護情報講習講師として、(財)国際研修協力機構(JITCO)の講師名簿に登録されておりますので、講習のご要望がありましたらご相談下さい。
(特定社会保険労務士・行政書士 比良さやか)
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