2011年11月アーカイブ

資格取得費用の負担について

社労士から一言~資格取得費用の負担について

 

先月のブログでは衛生管理者資格の取得やメンタルヘルス検定受検について書きました。業種によってはフォークリフトやクレーン、玉掛けなどの資格が必須となる場合も多く、それらの資格取得費用を会社が負担することもあるでしょう。今回はその際に気をつけておくべきことを書きたいと思います。

 

資格取得費用を会社が負担する場合、資格を取得したとたんに社員が退職するといったことを防ぐために「取得後○年以内は退職しない、退職する場合は全額費用を返還する」といった念書を社員から取ったり、退職を希望する社員に費用を返還するように要求したりする場合があります。

労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約を禁止しています。労働者に業務上必要な資格を取得させるために会社が支出した費用について、あらかじめ約束した期間勤務しない場合(=労働契約の不履行のある場合)に、損害賠償としてその費用を支払わせるという契約は、たとえその当時労働者から念書や合意書をとっていたとしても、16条に違反するものと解され無効となります。

それでは例えば、海外留学に要する費用相当額を会社が社員に「貸与」している場合はどうなるでしょう。

費用援助が「金銭消費貸借」であり、一定期間労働した場合にその返済を「免除する」とされている場合は、16条には抵触しません。金銭消費貸借はもともと返済が予定されているものであり、当然約定に従ってその返済を請求することが出来きるものであり、また一定の条件を満たした場合に返済を免除することは労働者にとっては有利な取扱いとなるためです。ただし、当該支出が金銭消費貸借であると主張するためには、研修目的や費用を貸与することの趣旨はもちろん、金銭消費貸借であること、貸付金の返済方法、返済期日、免除の事由などを明らかにしておかなければなりません。

ただ、「貸与」の形式だけを整えていれば良いというものではありません。業務命令で研修を指示する場合や、業務遂行・企業運営のために必要な研修を受講させる場合など、本来社員の自己研鑚ではなく、会社が経費として負担するのが相当と考えられるものについては、やはり判例でも「金銭消費貸借」とは認められず、16条違反とされるものが多く見られます。

もちろん退職を妨げる目的で違約金的性格の高率の利息を定めたり、必要以上の額を貸与して退職時の労働者の負担を重くするなどの契約は、退職の自由を不当に制限するものですから認められません。

会社負担にしろ本人負担にしろ、せっかく費用と時間をかけて資格取得に向けて勉強をするのですから、その向上心や技能・技術が企業にとっても労働者本人にとってもよりよい職場環境に結びつくものにしたいものです。

「勉強の秋」、資格取得のススメ

社労士から一言~「勉強の秋」、資格取得のススメ

 

関西では大阪マラソンに引き続き神戸マラソンも開催され、多くの市民ランナーが参加されるようです。まさにスポーツの秋、という感じですが、経営者の皆さんは自社の社員に「勉強の秋」を勧めてみられてはいかがでしょうか?

今回は社員の自己研鑚と同時に業務にも役立つ資格の中で、比較的取り組みやすい資格をご紹介します。

・衛生管理者

特 に建設業、製造業、運送業などは自社の社員にこの資格を取得させることは大変意味があります。労働安全衛生法では、常時50人以上が従事している事業場に 衛生管理者と産業医を選任して労働基準監督署に届け出ることを義務付けています。この場合の労働者数はパートタイマーや臨時アルバイトだけではなく、派遣 労働者や業務請負人を含めた人数で見ることになっているため、新入社員を一人雇い入れただけで急遽選任義務が発生したり、増員の必要が出たり(労働者数によって選任すべき人数も決まっています)という事態もあり得る上に、建設業や製造業、運送業など一定の業種では社外の者を衛生管理者とすることが出来ないことになっているからです(二人以上選任する場合で労働衛生コンサルタントがいる場合を除く)。 衛生管理者試験は年に複数回実施されているとはいえ、いずれも受験者が多く、申込みのタイミングによっては希望の日に受験出来ないこともあります。労働基 準監督署の臨検が入ってから慌てることのないよう、衛生管理者資格の取得を推奨しましょう。試験の詳細は財団法人安全衛生技術試験協会のHPを参照して下さい。

 

・メンタルヘルス・マネジメント検定

人事や総務に関わる社員にお奨めしたい資格がメンタルヘルス・マネジメント検定です。こちらは国家資格ではなく2006年 から大阪商工会議所が主催している検定試験ですが、心の病による休職者は年々増加しており、精神障害による労災の請求件数も平成22年度には1181件に 達し2年連続で過去最高を更新しています。このような状況下においては各企業におけるメンタルヘルスケアの重要度は今後ますます高まってくるでしょう。

この検定は一般社員・新入社員を対象に自らのメンタルヘルス対策を推進するⅢ種(セルフケアコース)、管理職を対象としたⅡ種(ラインケアコース)、さらに人事労務管理スタッフ・経営幹部を対象としたⅠ種(マスターコース)の3コースが用意されており、管理職や人事担当者だけでなく、新入社員教育にも有効です。社員の異変をいち早く察知し重症化する前にケアをするだけでなく、職場のストレスを軽減し発症を予防することは、労災認定やそれに続く民事訴訟のリスクを軽減し、CSR(企業の社会的責任)の視点からも重要な課題です。

メンタルヘルスケア検定は3月・11月の年2回実施されており、公式テキストや問題集も書店で販売されています。詳しくはメンタルヘルス・マネジメント検定の公式HP(http://www.mental-health.ne.jp/)をご覧下さい。

(特定社会保険労務士・行政書士 比良さやか)

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