2012年12月アーカイブ

年末調整について

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ここまで、個人事業と会社設立のメリット・デメリットということで数回にわたって書いてまいりました。これについてはまだ「銀行借入などの資金調達のしやすさ」についてのテーマが残っておりますが、今回は12月ということで年末調整について触れてみたいと思います。

 

1.年末調整とはなんでしょうか?

 

1)年末調整とはどういう手続きでしょうか?

企業は従業員に給料を支給する際に所得税を天引きし、原則として毎月税務書に納めます。だから天引きにより納税か完了したと思いがちですが、従業員各人の所得税は暦年中の所得に対して課税されるため、毎月天引して納めた税額と年間所得に対する税額は通常異なるため、年間所得に対する税額に精算する手続きが必要になります

この手続きが年末調整です。

 

2)なぜ年末調整という制度ができたのでしょうか?

そもそも、日本の所得税は申告納税制度を採っていますので、本来はだれであろうと、毎年、前年1年間の所得を集計のうえ確定申告を行わねばなりません。

しかし、全員が確定申告をするとなると、納税者の負担になることと、税務署も一時に手続きが集中し対応ができません。

他方、企業には源泉徴収義務があり、給与からの天引きしたうえで、原則として毎月従業員各人の所得税を前払していますので、年末に企業が従業員各人の年間税額を計算して、従業員に対し天引きとの差額を精算してしまえば、従業員各人がわざわざ確定申告をせずとも申告をしたのと同じになり、従業員、税務書ともに大きな負担軽減になります

このため、年末調整が制度化されたわけです。

 

2.年末調整の対象になる人はどんな人でしょうか?

 

原則:会社に「給与所得の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人全員

1つの会社に勤めている方はその会社に提出します。

2つ以上の会社に勤めている方は、どれか1つにのみ提出します(2社以上に 対し提出できません)。

 

年末調整の対象にならない人

会社に「給与所得の扶養控除等(異動)申告書」を提出していても以下のような方は年末調整の対象になりません。

①    年間の給与収入が2,000万円を超える方

②    年の途中で退職した方(ただし、死亡退職、退職後その年中に再就職が見

込めない方は除く)

 

これら、年末調整の対象にならない方は、原則として確定申告を行わねばなりません。

なお、①②以外の方で、他の企業から給料を得ている方は、年末調整を行った場合でも原則として確定申告を行わねばなりません

 

3.年末調整はどのように手続きするのでしょうか?

 

大まかには以下のような流れになります。

 

①     扶養控除等(異動)申告書の回収

②     配偶者特別控除申告書の回収

③     保険料控除申告書の回収

④     (特定増改築等)住宅借入金特別控除申告書の回収

特別控除適用2年目以降の方のみ対象。1年目は確定申告を行わねばなりません。

⑤     年間の給与台帳の整備(年間給与額、源泉徴収税額、社会保険料従業員負担額の確定)

⑥     各自の課税所得金額の計算

⑦     各自の算出年税額の算出

⑧     ⑦から住宅借入金等特別控除額の控除を行い、確定年税額を算出

⑨     各自へ過大税額を還付し、不足税額を徴収

 

上記の手続はどれも必要な手続きではありますが、①~⑤が特に重要です

なぜならば、①~⑤は⑥~⑨を計算するための基礎データであり、これが誤っていた場合、⑥~⑨の計算をいくら正確に実施しても、誤った税額が算出され、せっかく年末調整を行っても、その訂正のためにわざわざ確定申告をしなければならなくなるからです

 

4.年末調整で従業員から書類を受け取るときどのような注意や確認をすればよいでしょうか?

 

①     扶養控除等(異動)申告書の回収時の留意点

・従業員及びその扶養家族の氏名、住所、生年月日が記載されているか?

・新入社員や中途入社の社員については前職の有無を確認し、前職がある場合は前職の源泉徴収票が回収できているか?

・控除対象配偶者の記載がある場合、配偶者が控除対象配偶者の要件を満たすか?

・控除対象扶養親族の記載がある場合、扶養親族が控除対象扶養親族の要件を満たすか?

②     配偶者特別控除申告書の回収

・配偶者特別控除申告書に記載がある場合、配偶者特別控除の要件を満たすか?

③     保険料控除申告書の回収

生命保険料控除証明書は添付されているか?

地震保険料控除証明書は添付されているか?

・一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の区別は正しいか?

・一般の生命保険料または個人年金保険料の場合、「」と「」の区分は正しいか?

・申告書の記載内容と控除証明書は一致するか?

・保険契約者は従業員本人か?

・申告書に記載されている控除額の計算は正しいか?

・社会保険料控除の記載があるか?あれば国民年金保険料の控除証明書は添付されているか?(給与から天引きされている社会保険料については、保険料控除申告書に記載する必要はありません)

・社会保険料控除の記載と国民年金保険料の控除証明書や国民健康保険料の領収証等の記載と一致するか?

小規模企業共済等掛金控除の記載はあるか?あれば控除証明書は添付されているか?(給与から天引きされている小規模企業共済等掛金については、保険料申告書に記載する必要はありません)

④     (特定増改築等)住宅借入金特別控除申告書の回収

・当年分の給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金特別控除申告書が提出されているか?

・申告書の下に税務署長の印がある控除証明書がついているか?(ただし、その会社で年末調整での住宅ローン控除を行う初年度のみ、2年目以降は税務署長の印がない「参考事項」がついていればよい)

・金融機関等が発行した「住宅取得資金に関わる借入金の年末残高等証明書」は添付されているか?

・申告書に記載されている控除額の計算は正しいか?

 

というように、年末調整で従業員から書類を受け取るときに必要な確認は多岐にわたります。


5.年末調整の手続きにつき詳しく知りたい場合どうすればよいでしょうか?

 

年末調整は、多くの会社員にとっては確定申告に匹敵する年間の税金を確定する重要な手続きですが、今回みたように簡単な手続きではありません。

手続きを詳しく知りたい場合、国税庁ホームページの「平成24年分年末調整がよくわかるページ」http://www.nta.go.jp/gensen/nencho/index.htm を参照いただくか、経営者の方は以下の問い合わせフォームでお問い合わせください。

 

(東京事務所所長 社員税理士 望月俊治)

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