社労士から一言~雇用継続制度に関する特例措置が3月末で終了します~
(c) ララ|写真素材 PIXTA
少しずつ寒さもやわらぎ早くも3月を迎えました。
中には従業員の退職に関する規定を3月の年度末をもって定年退職と定めていらっしゃる事業所もおありでしょう。
今回は高年齢者雇用安定法について、注意すべき点を取り上げたいと思います。
高年齢者雇用安定法は現在65歳未満の定年を定めている事業主に対し、段階的に、
①定年の引き上げ
②継続雇用制度(希望者を定年後も引き続き雇用する制度)の導入
③定年の定めの廃止
のいずれかの措置を講ずるよう求めており、高年齢者雇用確保措置の義務対象となる年齢も老齢年金の定額部分の支給開始年齢の引き上げスケジュールに合わせて引き上げられています。
最終的には平成25年4月1日からは義務対象年齢は65歳となり、すべての企業で何らかの形で希望者を65歳まで雇用する制度を導入しなければなりません。
これらの措置のうち、②の継続雇用制度に関しては、適用対象者の基準を労使協定で定めることが出来ますが、労使協定締結の努力をしたにもかかわらず協議が調わなかった中小企業(300人以下)の事業主については、経過措置として就業規則で基準を定めることが出来る特例措置が設けられていました。
そしてこの措置は今年3月31日で終了することになっています。
就業規則で対象者の基準を定めている事業主の方は、3月31日までに
①「定年の定めの廃止」、「定年の引き上げ」または「希望者全員の継続雇用制度の導入」
②継続雇用制度の対象となる高年齢者の基準について労使協定を締結する、のいずれかを実施しなければなりません。
厚生労働省では高年齢者の雇用の安定を図るため、可能な限り①の実施を求めています。
やむなく選定基準を設ける場合には、その基準について
①意欲・能力などをできる限り具体的に測るものであること(具体性)
②必要とされている能力などが客観的に示されており、基準を満たす可能性を予見することができること(客観性)を備えていることが望ましいとされており、「会社が必要と認めたもの」等の具体性に欠けるものや他の法令に違反する「男性に限る」といった基準は認められません。
この労使協定による継続雇用制度の適用に関しては「当然自分にも適用されるものと思っていた」とする労働者と望まない労働者を排除したい事業主との間で紛争に発展する事案も増加していることから、労使間でよく協議し、具体的客観的な基準を設けるとともに公正な運用をはかることが重要です。
①の制度導入に関しては条件によって奨励金など各種支援策を活用することが可能な場合がありますのでお近くの高齢・障害者雇用支援機構にお問い合わせ下さい(ただし、4月以降奨励金の制度が廃止・変更される場合があります)。
なお、制度の変更、導入に伴い就業規則を変更した場合は、管轄の労働基準監督署に届け出る必要がありますのでお忘れなく。
(特定社会保険労務士・行政書士 比良さやか)