社労士から一言~仕事中に社長がケガ!どうする?
新年明けましておめでとうございます。被災地の皆様には決して明るいばかりの新年とは言えないかもしれませんが、本年が皆様にとって良い年となりますようお祈りいたします。
さて、今回は日本経済の基盤を支える中小・零細企業の事業主の方々に気をつけていただきたい「社長の労災事故」について書いてみたいと思います。
先 日、ある会社の社長の奥様から「社長が仕事中にケガをしたので、とりあえず健康保険を使って病院で診てもらった。ところが役所から問い合わせがあり、その 結果健康保険は使えないと言われた。なんとかならないか。」というご相談がありました。そのお客様の会社は健康保険の被保険者がちょうど5人の小さな会社 で、社長自ら従業員と一緒に現場で仕事に精を出されていますが、労災保険の特別加入はしていませんでした。
このお客様の場合、残念ながら、「なんともなりません。」としかお答えのしようがありません。
実は、この会社の被保険者が5人未満であれば、労災保険に特別加入をしていない代表者は健康保険を使って治療を受けることが出来ました。
被保険者5人未満の法人の代表者等に対する健康保険の適用については、平成15年7月1日付で以下のような厚生労働省保険局長の通知が出ています(保発第0701002号)。
1.健康保険の給付対象とする代表者等について
被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による保険給付の対象とすること。
2.労災保険との関係について
法 人の代表者等のうち、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び労働基準法上の労働者の地位を併せ保有すると認められる者であって、これによりその 者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関し労災保険による保険給付が行われてしかるべき者に対しては給付を行わないこと。(以下略)
こ のように被保険者5人未満の小規模事業所の代表者等は、業務上の傷病に関して健康保険の給付を受けることは出来ますが、この場合傷病手当金の給付は行われ ないことになっています。そのため、療養期間が長期に渡る場合、会社の経営状態によっては役員報酬を受け続けることも傷病手当金を受けることも出来ず生活 に困窮することも考えられます。また、5人以上の規模であれば治療費自体、どの保険給付も受けることが出来ず全額自費になってしまいます。
近頃では元請企業や発注元企業などが契約先の事業主に対し、特別加入していることを契約条件として求めることも増えています。いざという時に備えて中小事業主の皆様にはぜひ、労災保険の特別加入についてご検討いただきたいと思います。
以上のようなお話をさせていただいた結果、ご相談いただいた奥様はさっそく社長の特別加入の手続きをされたのでした。
(特定社会保険労務士・行政書士 比良さやか)