社労士から一言~労使トラブル防止-①試用期間の延長はできますか?
4月になり、多くの会社で職場に新入社員を迎え入れられたことでしょう。昨今のしい就職戦線を勝ち抜いた新入社員たちはそれぞれに希望と不安に胸ふくらませていることでしょうが、社会人としての基礎から教える前提で採用した新卒社員はともかく、既卒者や中途採用者の場合は、多くの会社が試用期間を設けてその期間に自社の社員としての適格性を見極めることにしているようです。
【事例】A社では新たに採用した者の試用期間を3カ月と定めていますが、今回採用したXについて、3カ月では本採用してよいかどうか判断がつきかねるとして、試用期間を延長しようとしています。X本人にその旨伝えましたが、Xは延長を拒否。この場合、A社は一方的に試用期間を延長出来るでしょうか?
【社労士の意見】試用期間の性格は、その労働者の業務遂行能力や勤務態度の適格性を判断するための期間であり、その期間は「解約権を留保された」期間ということになります。試用期間中は判例上解雇は本採用後に比べれば比較的容易ですが(もちろん、合理的な理由がなければ試用期間中の解雇であっても解雇権の濫用とみなされ、無効となります。)その分、労働者にとってはいつ解雇されるかという不安がつきまとう不安定な期間ということになります。そのため、判例では試用期間を延長できる場合を厳格に判断しています。
① 試用期間の延長について就業規則等で明文化されていること
② 長年にわたって会社の慣行として試用期間の延長の制度があること
③ 本人の許諾があること
④ 本人の適格性に問題があり、その採否について、通常の試用期間を超えて本人の勤務態度を観察することに合理的理由があること
また、試用期間の延長には「必ず期間を限る」ことと、その延長期間について「合理的な期間であること」が必要です。
今回のA社の場合も、Xの適格性については基本的には3カ月の試用期間中に判断すべきで、試用期間を延長するにはその期間内に判断しかねるような客観的かつ合理的な理由が必要となります。
なお、労働基準法第21条は解雇予告が不要な者として14日以内の試用期間中の者を挙げていますが、これはあくまで第20条の「予告」が不要ということであって、試用期間中の解雇が無制限に認められるということでは決してなくさらに予告なく解雇するためには試用期間であるということが労働者に明示されている必要があります。誤解されている事業主の方もいらっしゃるようなので、ご注意下さい。
(特定社会保険労務士・行政書士 比良さやか)