2013年1月アーカイブ

個人事業と会社設立のメリット・デメリット【4】

 

201301s.png前回は12月ということもあり、年末調整について解説をいたしましたが、今回は、個人事業と会社設立のメリット・デメリットというテーマに戻り、「銀行借入などの資金調達のしやすさ」について見ていきたいと思います。


事業を始める場合、会社の設立費用、事務所等の敷金・礼金、什器・備品の購入、広告宣伝、人材の募集など、事業開始前あるいは直後で売上が少ないなかで多額の資金が必要となります。

事業開始後もたとえば、事業拡大して拠点を増やす場合や、大きな契約を獲得したが後払いなどに場合は、やはり売上入金に先行して資金が出て行くので、あらかじめ資金が必要となりますし、業績が思わしくない場合も、縮小均衡に甘んずるのではなく、不振原因を分析して回復策を実施する場合も資金が必要です。

資金が必要な場合、個人事業者や会社経営者に多額な手持ち資金がある場合は別ですが、通常は資金調達をすることが必要となります。

このように、個人事業主や会社経営者にとって資金調達とは事業あるいは会社を続けていく限りは常に存在する重要な課題でありますから、個人事業と会社設立で資金調達はどのように違うのかを押さえておくことは、事業開始にあたって是非押さえておきたいものです。


1.資金調達にはどういう方法があるでしょうか?


1)出資

創業者以外の者に会社の構成員(社員という)になってもらうと同時に会社に資金を拠出してもらうことです。

2)株式発行

創業者以外に者に会社の株式を発行して、株式代金を会社に拠出してもらうことです。

3)社債発行

会社が債券を発行し、債券の券面額を会社に拠出してもらうことです。

4)借入金

個人事業者や会社が、他の個人または法人から金銭を借りることです。


2.個人事業者と会社で資金調達のしやすさに違いはあるでしょうか?

1)資金調達の種類

出資、株式発行、社債発行は会社にしか存在しない制度なので、当然個人事業者は利用できません。さらに株式発行は株式会社にしかできません。

個人事業者が利用できるのは借入だけと言えます。

ですから、利用可能な資金調達方法の種類は、圧倒的に会社、特に株式会社が豊富ということになります。


創業間もない会社や規模が比較的小さい会社は、株式市場や社債市場で株式や社債を発行して資金調達できるわけではないので、出資を仰ぐにも、株式や社債の引受人をさがすのも、縁故者からということになります。ですから、資金調達方法の種類の多さが資金調達先を大きく広げることにはつながりません。


しかしながら、縁故者の側にとってみれば、たとえ流動性がなくても、出資や株式の引受で経営参画権や将来の値上がり期待を得ることに魅力を感じるひとも、少人数私募債の源泉分離課税を利用して節税メリットを得ようというひともいるであろうから、資金調達方法の多さは、資金調達先にいろいろなバリエーションを呈示でき、それが資金の出やすさにつながると考えられます。

従って、資金調達種類が多い会社設立の方が有利であると結論づけられます。


2)借入のしやすさ

・日本政策金融公庫

個人か会社という事業形式は融資にあたっての条件とはなっていません。

・信用保証協会

個人か会社という事業形式は保証にあたっての条件とはなっていません

・銀行借入

これは各銀行により異なり、いちがいにはのべられませんが、1つ言えることは、もし借入申込に行った金融機関が融資の対象として会社であることを条件としていた場合は、個人事業者は門前払いに甘んじなければなりません

この他、会社の場合は設立費用もかかり、税金(いわゆる均等割)や変更登記費用などの必ず発生する費用もあるため、会社形式で事業を行うこと自体、個人事業で行っている場合とくらべ、事業主が真剣に経営に取り組んでいるという印象を与えることができるという意見もききます。また、個人は亡くなるが会社は無くなることはなく永続的に続くため、個人では難しい多額な融資も会社の場合は受けることができるという話もあります。


これらの話を総合すると、個人事業者よりも会社設立の方が金融機関からの資金調達は行い易いということになります。


3.最後に、資金調達の大前提

個人と会社の資金調達における有利不利をみてきました。

多少の有利不利はあっても、個人事業者でも会社でも資金調達は可能ということはご理解いただけたと思います。


しかし、資金調達を行うために最も重要なことは、しっかり返せるということを、資金の拠出者に説明できることです。

このためには、適正に作られた財務諸表実現可能性が高い事業計画が必須です。

ですから、資金調達を有利に行っていきたいと考えるならば、個人、会社といった事業を行う形式の選択も考慮すべきですが、財務諸表や事業計画をしっかり作ることを重視していただきたいと思います。

(東京事務所所長 社員税理士 望月俊治)

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