社労士から一言~安全衛生管理体制について~
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まだまだ厳しい残暑が続いています。
前回は職場での熱中症対策についてお知らせしましたが、
今回は労働安全衛生法に定められている安全衛生管理体制について
簡単に説明したいと思います。
労働安全衛生法という法律は、
事業主の皆さんも一部の業種の方などを除いて、
普段あまりなじみのない法律だと思いますが、
業種や規模にかかわらず適用される労働災害防止に関する規定や
健康診断に関する規定などを定めた身近な法律でもあります。
労働安全衛生法では、企業の自主的な安全衛生活動のための
体制を確立するために、
一定規模以上の事業場ないし一定の業種の事業場において、
総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者の選任や
労働基準監督署長への報告等が義務付けられています。
・「総括安全衛生管理者」は安全管理者や衛生管理者の指揮をするとともに、
労働者の安全管理体制を統括管理する立場の責任者です。
選任義務は規模や業種によって次のように決められています。
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業では
常時使用する労働者が100人以上の事業場
製造業、電気業、ガス業、水道業、通信業、
各種商品卸売・小売業、旅館業、自動車修理業、機械修理業等では
常時使用する労働者が300人以上の事業場
その他の業種では
常時使用する労働者が1000人以上の事業場
・「安全管理者」は作業場の巡視や設備、作業方法等の危険防止措置を
講じるなど、総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち
安全に係る技術的事項を管理します。
理系の課程を修了し産業安全の実務経験(学歴により年数が違います)
のある者で厚生労働大臣が定める研修を修了した者や、
労働安全コンサルタントの中から選任しなければなりません。
選任義務のある事業場は常時50人以上の労働者を使用する
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業、電気業、ガス業、
水道業、通信業、各種商品卸売・小売業、旅館業、
自動車修理業、機械修理業等となっています。
・「衛生管理者」は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、
労働者の健康障害を防止する措置を講じるなど、
衛生管理に係る技術的事項の管理を行います。
業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場
ごとに選任しなければならず、
また、労働者の人数によって選任すべき
衛生管理者の人数も決められています。
衛生管理者は都道府県労働局長の免許
(第1種衛生管理者免許、第2種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許)
を受けた者、
医師又は歯科医師、労働衛生コンサルタント等の資格を有する者
でなければなりません。
また業種によって必要とされる資格も違っています。
・「産業医」は業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場
ごとに選任することになっています。
どの医師でも良いというわけではなく、
厚生労働大臣指定の研修を修了した者等
一定の要件に該当する医師でなければなりません。
・その他10人以上50人未満の労働者を使用する中小規模の事業場では
業種によって安全衛生推進者や衛生推進者を、
また一定の危険有害な作業を行う場合には作業区分に応じて
作業主任者を選任しなければならないことになっています。
特定の業種以外の事業主の皆さんにとっては
あまり関係のないことのように感じられたかもしれませんが、
衛生管理者のように業種に関係なく労働者数が一定数以上になれば
選任義務が発生する場合もあります。
会社の規模が大きくなり、いざ選任しようと思っても、
免許を持っている労働者がいなければ要件を満たすことが出来ません。
衛生管理者試験は毎月行われていますが、
自社の労働者がその試験に合格してくれないことには
選任することが出来ないという事態も発生します。
従業員の教育訓練やモチベーションアップのため、
日頃から色々な資格や免許取得に挑戦するよう会社として
バックアップすることも必要でしょう。
その際には雇用保険の教育訓練給付などをうまく利用するようにすれば
費用負担も多少はおさえられます。
ただし、免許取得費用等を会社が負担し、
一定期間内に退職した場合は全額その費用を返還させる
といった契約は、
内容によっては労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に違反する
おそれがありますので、注意が必要です。
(特定社会保険労務士・行政書士 比良さやか)