労使トラブル防止-②有給休暇の取得について

社労士から一言~労使トラブル防止-②有給休暇の取得について  201205.png

早いもので大型連休もあと残りわずかとなりました。中には平日の1日、2日に有給休暇を取り、9連休を満喫している社員の方もいらっしゃるでしょう。今回は有給休暇の取得について、注意すべき点を解説したいと思います。 

【事例】Aさんは学生時代の友人と海外旅行に出かけようと、有給休暇を申請。会社の承認を得て旅行に出かけ、心身ともリフレッシュして戻ってきました。ところが給料日に支給された給与明細を見てみると皆勤手当がカットされていました。社内の規定にある通り、有給休暇は取得日の1週間前までに申請をして承認を得ていたのに、納得出来ないと相談にやってきました。 

【社労士の意見】事業主の言い分は、有給休暇を取得した者と取得しない者とでは会社に対する貢献度が違う、そのため取得しないで働いてくれる社員に報いるため、有給休暇を取得した者に対してはその月の皆勤手当は支給しない、というものでした。 

しかし、昭和63年に改正施行された労働基準法附則136条は、有給休暇の取得に関し「不利益な取扱いをしないようにしなければならない」旨規定しており、皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して年次有給休暇を取得した日を欠勤として、または欠勤に準じて取り扱うこと、またその他労働基準法上労働者の権利として認められている有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取り扱いをしないようにしなければならないこととされています。そのため、今回のAさんに対する皆勤手当の不支給は労働基準法に違反することになります。

その他、年休の買い上げを予定する契約、放棄する旨の契約、年休を取得せず稼働した場合に特別賞与を支給する契約は無効となります

また、病気や家族の慶弔などやむを得ない事情がある場合にしか有給休暇を申請出来ないような雰囲気の会社もありますが、特別の場合争議行為に利用する目的など本来の有給休暇の趣旨と外れた目的等を除いて有給休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であるとされており、本来は理由の如何を問わずに取得出来るものです。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には会社側には取得時季を変更する権利があります。この場合はあくまで時季変更権があるだけで、拒否することは出来ないことに留意して下さい。

有給休暇は労働者が賃金を得ながら一定期間労働から開放され、心身のリフレッシュを図り、より質の高い労働を提供できるようにすることが目的です。労使とも趣旨をよく理解し、有給休暇を上手に利用したいものです。

 

(特定社会保険労務士・行政書士 比良さやか)

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このページは、税理士法人 成長会計研究所が2012年5月 7日 11:15に書いたブログ記事です。

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